中世的世界の形成

石母田正
出版社: 岩波書店
出版年: 1985/09 (初版は1944年、昭和19年)

日本史を専門にする方々、あるいは日本で歴史学を学んでいる方々には言わずと知れた名著なのだろうけれど、すいませんすいません、僕はぜんぜん知りませんでした。著者の名前ぐらいは聞いたことがありましたけど。
畏れ多くも、眺め読み、走り読み。これまたY先生にお借りしたのだけど、ほとんど読まないうちにもう返さねばならず、先生が絶賛するその内容はと、ちょっと散策してみる。読んでいて、石母田はやっぱりマルクス読んでたんだなあとか。 土地制度への関心とかも、その辺から来てるのかなあとか(たぶんそうでしょ)。

読んでいて面白いなと思ったのは次の一節。

本来黒田庄の在地武士団の子孫であったこれらの地侍は、何故庄民を組織するかわりにそれから孤立して山賊・追剥的な一面をもつようになり、同じ黒田庄の百姓の家屋に放火し無意味な殺人を行い、墓を発くような行動に出るに至ったのであろうか。かかる道徳的頽廃は、偶然のものでなく、黒田悪党の固有の面であるとすれば、かかる性格は農村武士の性格やこの時代の風潮から皮相に説くべきでなく、むしろこれらの悪党が住んでいた黒田庄という世界との生きた関連において理解すべきであろう。一人の人間が頽廃する現象はその人間が結ばれている世界の頽廃の表現であるから、これらの武士の頽廃も深い根拠なくして起り得るものではない(386ページ)。

ここの部分は、自分の専門分野にひきつけても考えることができて、ひじょーに面白い。がしかし、そのためにはもっとちゃんと読まねば。